上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「医療安全」に対する認識不足が医療事故につながる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 今月11日、千葉市立青葉病院が医療事故を起こしたと発表しました。2019年11月、自転車で転倒した50代患者の左腕の肘関節手術を行った際、執刀した当時6年目の担当医が尺骨神経をメスで剥離する過程で、誤って神経の4分の3を切断。手術に立ち会っていた指導医もミスを見逃してしまいました。手術後、患者は指がしびれたり握力が低下するなどの後遺症が残っていて、病院側はミスを認めて損害賠償するといいます。

 病院の説明では、ベテラン指導医の介助を受けながら執刀した担当医が、難易度の高い手術なのにメスによる剥離にこだわり、慎重さを欠く手技上の過失があったとしています。担当医はすでに退職しているそうです。

 発表されている以上の詳しい状況はわかりませんが、同じように実際に手術に臨み、また若手医師を指導している立場から見て、思うところがいくつかあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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