がんと向き合い生きていく

在宅勤務は社会の分断を招き人と人の関係が薄くなるのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Aさん(50歳・男性)は初夏のある朝、混んだ電車に乗ったところ、ひどいめまいと嘔気に見舞われ、途中下車しました。すぐに内科を受診し、頭のCT検査を行ったのですが、脳腫瘍などはなく、医師から「めまいの原因は分からない」と言われました。

 しかし、その5日後にも電車で気持ちが悪くなり、今度は嘔吐してしまいました。「がんがあるのではないか……死ぬのではないか」と不安になり、同じ内科で胃内視鏡検査を受けたところ、こちらも問題はなく、精神科を紹介されました。

 精神科では「パニック障害」との診断でした。内服薬が処方され、1カ月ほど会社を休むことを勧められ、診断書を書いてもらいました。Aさんは「もしかしたら、会社の上司から2回ほど理不尽な注意を受けたことが自分の心に響いているのかもしれない」と思ったのですが、そのことは精神科医にも言いませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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