がんと向き合い生きていく

在宅勤務は社会の分断を招き人と人の関係が薄くなるのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 会社に診断書を提出し、Aさんが担当者に「仕事が滞ることが心配だ」と伝えると、在宅でのテレワークができるよう手配してくれました。

 その頃から、新型コロナウイルスの感染者が急激に増え、1カ月後には社員の多くがテレワークになりました。Aさんは自分だけが在宅勤務ではなくなって、とても気が楽になりました。

「お父さんはいいな。ずっと家に居られて……」 小学4年生の息子から、そう言われたのは夏休みの終わり頃のことでした。学校に行きたくない理由を聞いたところ、息子は「同じクラスに何かと僕に意地悪する子がいる。先生に言ったってムダだよ。だって、その子は先生にひいきにされている子だから」と言います。

 Aさんは、自分が在宅勤務なのに息子には「ガマンして学校に行きなさい」と諭すのはなんとなく後ろめたい気がして、その時は黙っていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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