上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓トラブルがある人、高齢者、お酒好きは「脱水」に注意

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 お酒を飲んでいい気分で帰宅してすぐにバタンと寝てしまうと、就寝中に脱水症状を起こして心臓トラブルが発生するリスクがあります。また、そのまま入浴するなど血圧を急激に変動させる状況をつくると、これも心臓トラブルを招きかねません。とりわけ、酔ったまま湯船につかってポカポカと温まり、気持ちよくなってそのまま寝てしまうのは非常に危険です。

 自動保温機能が付いている浴槽であればまだいいのですが、そうではない場合、お湯の温度がだんだん下がってきて体温も低下していきます。すると、血管が異常に収縮する攣縮が起こり、心臓が虚血状態に陥ります。さらに、体温が低下すると、利尿作用が促されるなどして体内の水分バランスが変化し、脱水状態になります。そうしたトラブルが重なって、命に関わる危険があるのです。

 東京都監察医務院のデータによると、東京23区では年間約1400人が入浴中に亡くなっていて、低体温症の手前くらいの状態で心臓の冠攣縮を起こして死亡したケースも見受けられます。そうした死亡事故のベースには脱水があるといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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