最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

平穏で温かい思いや感謝の気持ちが伝わるみとりだった

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまで、ご自宅にお伺いする診療の中で一人一人の患者さんが私たちにとって大変思い出深く、いつも人生にとって大切なものは何か、家族の愛とは、といった学びを得ていると実感する日々を送っています。

 そんな思い出深い患者さんにこんな方がいました。

 その患者さんは90歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患と誤嚥性肺炎の治療のあと、退院。自宅療養となり、私たちが訪問診療を担当することになりました。

 武骨なご老人で、それもそのはず最後の陸軍士官学校卒の61期生という経歴をお持ちで、戦中戦後を生き抜いてこられた方でした。約3年にわたる訪問診療の間に、そんな当時のお話もよく聞かせていただきました。

 都内から疎開先の埼玉の朝霞で終戦を迎えると、教師を志して大学進学を目指すも「戦争に加担した軍関係者は入学できません」と門前払いとなり、家業に戻りパン屋を継ぐことになったといいます。やがて結婚、一家を構え、一粒種の娘さんも誕生し、家族を守り通してきた人生でした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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