がんと向き合い生きていく

がん薬物治療のパイオニアだった木村禧代二先生との思い出

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 当時のがんセンター血液内科グループでは、毎週1回、朝8時から1時間の抄読会が行われていました。担当者は、外国の有名医学雑誌の最新版から論文をひとつ選び、図表などをプリントしたうえで論文を和訳して説明します。木村先生は出張などで不在の時以外は必ず出席され、いろいろとコメントされました。

 また学会の会場では、木村先生は一番前の席に座り、演者によく質問されていました。木村先生がおられる、おられないでは、会場の緊張が違っていたように思います。

 木村先生が年に何回か外国に出張される際は、血液検査室の技師さんも含め、手の空いている者は羽田空港まで見送りに行きました。どうしてそんな習慣になっていたのか、がんセンターが羽田に近いこともあったからかもしれません。私も何回か見送りに行き、飛び立つ飛行機に空港の屋上から手を振りました。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事