がんと向き合い生きていく

がん薬物治療のパイオニアだった木村禧代二先生との思い出

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある年の暮れ、4人の若手医師を駒沢公園近くにあった宿舎に呼んでくださり、盛りだくさんのすき焼きをごちそうになりました。あの時の超満腹感は忘れられません。また正月は、「田舎に帰れ。患者は私が診ておく」と言ってくださり、私は安心して帰郷することができました。

 先生は一筋、患者のため、学問のための人生を送られたと思います。

 私がレジデントを修了した時、「佐々木君、同じことを10年やってみなさい。10年やっていたら、必ず認められるようになる」と言葉をかけてくださいました。

 私はもう、その10年を4回以上繰り返しています。

 論文を書いていて、「今夜はもうやめた。明日にしようか」と思った時、しばしば「おーい、佐々木君、もう風呂か」という木村先生の声が、頭の中で響きます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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