とはいえ、胎児手術には医師にも機材にも高い技術が求められます。赤ちゃんはお腹の中で動くので、手術の際にはきちんと麻酔をかけ、心臓手術では小さく狭い範囲の患部にピンポイントで針を刺さなければなりません。少しでもずれてしまうと、血管や心筋を傷つけて心停止する危険もあるのです。
そのためには高精度の映像診断機器が欠かせません。赤ちゃんに対しては放射線が使用できないので、精密な画像が得られる超音波(エコー)やMRI、4Kや8Kクラスの内視鏡システムなどを手術室の中で使える設備が必要です。
今回の大動脈弁狭窄症に対する胎児手術は、そうしたいくつもの高いハードルをクリアして大きな成果をあげたケースといえます。順調に症例数が増え、安全性と有効性が確認されれば、これまで治療の手だてがなかったような赤ちゃんの先天性の心臓病に対する光明になるのは間違いありません。
赤ちゃんにとっても親にとっても福音になるよう、今後のさらなる進歩に期待しています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」