認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

WHOの12指針で認知症リスクを下げる 今すべきは2次予防と3次予防

筋トレより有酸素運動(C)日刊ゲンダイ

 病気の予防には段階があります。新型コロナウイルスでは、1次予防がワクチン接種で感染しないようにする、2次予防がマスク着用・手洗い・3密回避などで発症を遅らせる、3次予防が発症しても薬で重症化しないようにする。

 認知症予防でも、3つの段階に分けて考えます。1次予防(発症させない)は、アルツハイマー病の根本的な原因が解明され、それに介入すること。現段階では1次予防は難しい。ただし、できる限り認知症にならない生活は送れます。

 確実にできるのは、2次予防と3次予防です。2次予防では、生活を改善し、発症リスクを下げる。3次予防では、早期に発見し、薬物療法と非薬物療法の両輪で認知機能の低下スピードをゆっくりにする。認知症が進むと、自分の状態の理解が不十分になるため、意欲的に治療に取り組むためにも、早くからの予防が大切です。

 2次予防、3次予防に役立つものとして、WHO(世界保健機関)が2019年に発表した「認知機能低下と認知症のリスク減少の指針」、そしてランセットに17年、20年に掲載された認知症の危険因子に関する論文があります。

1 / 4 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事