認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

WHOの12指針で認知症リスクを下げる 今すべきは2次予防と3次予防

筋トレより有酸素運動(C)日刊ゲンダイ

 栄養面では、バランスの取れた食事が勧められ、地中海沿岸で取られる伝統的な食事「地中海食」、アメリカで高血圧改善のために推奨された「DASH食」が例として挙げられています。ただ、日本語版では、海外と日本の食習慣が異なることから地中海食の導入は難しいと記載されています。

 過剰なアルコール摂取は認知症などの危険因子になるので注意が必要。また、いわゆる脳トレはエビデンスは不十分であるものの、メリットの方がデメリットを上回るため条件付きで推奨。そして、他人との交流がないと認知症のリスクを高めるといわれ、ガイドラインでは推奨度は示されていませんが、一生を通じて社会的な活動に積極的に参加できる仕組みは必要としています。

 肥満はさまざまな病気のリスクを高め、体重管理は認知症対策としても不可欠です。高血圧、糖尿病、脂質異常症は認知症との関連が指摘されていますから、これらの生活習慣病がある場合は、治療に取り組まなければなりません。うつ病は認知症の病前状態である可能性があり、難聴は社会的孤独に陥りがち。コミュニケーション能力に悪影響を及ぼし、認知機能を低下させます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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