がんと向き合い生きていく

「毎日、体のどこかが痛い」と訴えるひとり暮らしの患者の心境

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「それは違いますよ。人間のリンパ腫と猫の白血病は違います」

「それを聞いて安心した。なんだか、人間と猫は違うけど、同じ命っていえば命だからね。かわいそうでね。お寺によっては猫も犬も一緒にお墓に入れてくれるところがあるらしいけど、うちの寺は大丈夫か聞いてみるよ。でも寂しいから、また猫を飼ってみるか迷ってる……時間とってごめんね」

「体調が悪かったら、また遠慮なく言ってください」

「もうひとつ聞いていいかい? 私は再発予防に何か薬を飲まなくていいのかな。隣の奥さんは60代だけど乳がんで、再発予防にもう4年も薬を飲んでいるといっていたから」

「そう、乳がんではホルモン剤を長く飲んだ方が再発は少ないけど、あなたのリンパ腫では再発予防の薬はいらないよ。しっかり治療してあるから、5年たってから再発する人はほとんどいない。だから5年過ぎたら、もうリンパ腫の定期的な検査はいらないと思う。でも、がんの検診は受けた方がいいよ。リンパ腫以外の別のがんにかかる可能性はあるんだから。あなたが乳がんにかからないとも限らないでしょう?」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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