がんと向き合い生きていく

脳梗塞による左麻痺が起こった原因は隠れた膵臓がんだった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Bさん(58歳・男性)は、昨年の会社の健診で肝機能異常を指摘されたのですが、病院を受診していませんでした。以前、脂肪肝と言われたこともあり、きっとそのせいだろうと思っていたことに加え、コロナの流行が下火になってから受診したいと考えていました。また、1カ月前から食欲がなく、だるさを感じていたことも、暑さのためと思っていました。

 その日も暑い一日でした。営業の仕事で、午後になって車を運転し、5件の顧客を回りました。夕方、とても疲れた感じがしたので会社には戻らず、自宅に直接帰りました。冷たいビールを楽しみに喉の渇きをガマンして、帰宅してすぐに風呂に入りました。

 異変は風呂から上がって体を拭いている時に起こりました。左手に力が入らず、バスタオルがつかめません。さらに左足も思うように動かないのです。Bさんは奥さんを呼んで着替えを手伝ってもらい、救急車をお願いしてF病院に搬送されました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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