Dr.中川 がんサバイバーの知恵

秋野暢子さんが告白した食道がんで厄介なのは「咽頭との重複」

秋野暢子さん(C)日刊ゲンダイ

 この食道がんは、重複しやすい特徴があります。秋野さんのように食道に複数が重複するのが一つ。もう一つは、咽頭や舌など別の部位です。食道がんの2割は、食道以外にもがんができる重複がんといわれています。

 食道がんは、アルコールとたばこが大きなリスクで、咽頭がんも舌がんも2大リスクが重なるため重複しやすいのです。舌がんをはじめ口腔がんの人も20%に食道がんがあるといわれます。食道とのど、口のがんは、とてもオーバーラップしやすいのです。

 秋野さんは35歳までたばこを吸われていたようで、アルコールは2年前に禁酒。一般に禁煙の効果は、20年でたばこを吸わない人と同じになるとされますから、秋野さんはお酒の影響が強いのかもしれません。

 食道がんと咽頭がんの重複が厄介なのは、治療の後遺症が重いこと。手術は声帯を切除するため声を失い、声帯を残す化学放射線療法でも照射範囲がとても広いため、口内炎やのどの痛みがひどく、声のかすれも強い。どちらの治療も、厳しいのが現実です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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