「抗がん剤をやめたら、生きることをやめてしまうような気がして」
山中院長はそんな言葉をよく聞く。
「命は必ず終わる。それは人類史上、変わりのない真実です。誰もがいつかは命を諦めなくてはいけないのです。それでも、“今”がすべての人にとって、少しでも長生きしたいのは生物としての生存本能として自然なものです。それにもかかわらず、多くの人が今“延命を望まない”のはなぜか。それは、『延命』という言葉の意味が、医師、患者とその家族との間であまりに異なっているからです。私たちが気を付けなくてはいけないのは、医者にとっても患者やその家族にとっても『延命措置』というものが何を示すのかをしっかりと考えて、共有をしなくてはいけないのです。病気の状態や人の価値観によっても大きく変わる問題なのです」
「緩和」もまた医師と患者と家族がその意味を共有すべき言葉だ。