がんと向き合い生きていく

いまも思い出す父のありがたい親心 勝新太郎さんの父親も…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私が大学生だった頃の夏休みに、国鉄の職員だった父に頼んで、線路工事の手伝いをさせてもらったことがありました。

 昼の暑い日差しの下、線路工手の方が線路に敷いた枕木を相手につるはしを振り下ろす姿に、私はある種の憧れを持っていました。意味は分かりませんが、「タカトッタ、タカトッタ」との掛け声をあげていた記憶があります。

 私にはそんな力仕事ができるはずがないのに、生意気なお願いでした。

 グループのリーダーは、私を一目見て、「あなたには危なくて持たせられない」と言いたげで、つるはしを持たせてもくれませんでした。結局、線路に敷かれた小石の周りに生えた草を取るように言われました。

 一日中、夏の炎天下に水筒の水を含みながら、耐えて草取りをしました。休めるのは昼食の時と列車が通る時でした。その休み時間に、試しに置いてあるつるはしを持ってみると、とても重くてうまく振り下ろせませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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