話は変わりますが、私は学生時代、勝新太郎さんの映画「座頭市」が好きでした。映写が終わって、暗かった映画館から外へ出ると、目も開けられないほどまぶしく、私はしばらく座頭市の“がに股”で歩いていました。
それからずいぶん後のことですが、たまたま勝新太郎さんの父、三味線奏者の杵屋勝東治さんのお話を聞く機会がありました。私から見ると、息子の若山富三郎さんや勝新太郎さんよりもずっと美男子で、背筋はピンと伸びて姿勢よく、“お殿さま”のような感じのとても魅力的な方でした。
「息子が言うのです。チャンバラ映画で、刀で相手役を切っても切っても倒れてくれない。それを聞いて、私は相手の役者にたばこを配りました。それから、切られたら倒れてくれるようになりました」
あんな豪快で強そうな勝新太郎さんでも、そんなことがあるのだ。やはり父とはありがたいものだ、と思いました。そして、自分の父のことを思い出すのです。
がんと向き合い生きていく