がんと向き合い生きていく

いまも思い出す父のありがたい親心 勝新太郎さんの父親も…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 話は変わりますが、私は学生時代、勝新太郎さんの映画「座頭市」が好きでした。映写が終わって、暗かった映画館から外へ出ると、目も開けられないほどまぶしく、私はしばらく座頭市の“がに股”で歩いていました。

 それからずいぶん後のことですが、たまたま勝新太郎さんの父、三味線奏者の杵屋勝東治さんのお話を聞く機会がありました。私から見ると、息子の若山富三郎さんや勝新太郎さんよりもずっと美男子で、背筋はピンと伸びて姿勢よく、“お殿さま”のような感じのとても魅力的な方でした。

「息子が言うのです。チャンバラ映画で、刀で相手役を切っても切っても倒れてくれない。それを聞いて、私は相手の役者にたばこを配りました。それから、切られたら倒れてくれるようになりました」

 あんな豪快で強そうな勝新太郎さんでも、そんなことがあるのだ。やはり父とはありがたいものだ、と思いました。そして、自分の父のことを思い出すのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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