がんと向き合い生きていく

いまも思い出す父のありがたい親心 勝新太郎さんの父親も…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「おいおい、そこの若いの、危ないからよしな!ケガするぞ」

 そう言われました。私は2週間くらい手伝うつもりでしたが、情けないことに草取りですら、暑さにやられて5日間でダウンしてしまいました。

 後で知ったのですが、父は現場の方に「息子はあんなことを言っているが、手加減してやって欲しい」と伝えてくれていたようでした。私にはまったく無謀な、無理な作業で、今でも恥じ入るばかりで忘れられません。

 しかし、「親心」とはそんなことかもしれないと思いました。

 父は、定年退職後、田舎の実家で母と2人で暮らしていました。毎年、秋には庭の渋柿を採り、段ボール箱に100個ほどしっかりと詰め込んで焼酎を振りかけ、「30日後まで開けないように」との指示と一緒に東京で暮らす私の元に送ってくれました。日にちを間違えて早く取り出すと渋かったり、遅くなると柿がグチャグチャになったりします。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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