がん治療最前線

保健適用が拡大された「陽子線治療」の実力 効果が高く副作用が少ない

南東北がん陽子線治療センターの陽子線治療照射室(提供写真)

 従来の放射線治療で使われるX線は、放射線量が最大なのは体の表面近くで、体内を進むにつれて減少する。そのため、体の奥深いところにがんがある場合は一方向の照射だけでは治療が成り立たない。また、がんに到達する前も通過した後も正常組織にダメージを与えてしまうので副作用のリスクが高くなるという弱点がある。

 冒頭でも触れたように、陽子線治療は2022年4月から保険適用が拡大された。加わったのは①肝細胞がん(長径4センチ以上のもの)、②肝内胆管がん(手術できないもの)、③局所進行性膵がん(同)、④局所大腸がん(手術後に再発したもの)の4疾患で、X線などほかの治療と比べて有効性と安全性のメリットが大きいと認められたからだという。

■膵がんで生存率が2倍に

「たとえば手術できない局所進行性膵がん(ステージ3)では、標準治療とされる抗がん剤の単独療法における生存期間の中央値はおよそ10カ月です。それが陽子線治療では約20カ月、平均的な生存率が2倍に延びることがわかっています」

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