認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

「話す」「耳を傾ける」が脳の活性化につながる 思い出話を大いにしよう

写真はイメージ

「また、思い出話ばかりして……」

 久しぶりに実家の親と会ったら、思い出話ばかりされすぎて、うんざりしたり、イラッとしたりしてしまった。そんなエピソードを聞くことがあります。

 でもみなさん、それが親御さんの脳の活性化につながっている可能性が大いにあるんですよ。

 認知症の方へのアプローチとして注目されている心理療法のひとつに、「回想法」があります。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー医師によって開発された手法です。これがまさに、思い出話をすること。

 日本では、高齢者のうつ病の治療法として導入されるようになったのですが、次第に認知症の治療に対して行われるようになり、さらには認知症の予防法としても行われるようになりました。病院や介護施設ではもちろん、自治体の介護予防事業などでも活用されています。専門家の指導のもとグループ単位で行われることが一般的ですが、個人で行っても効果があります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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