Dr.中川 がんサバイバーの知恵

古谷一行さん急逝…胃全摘による激ヤセで抗がん剤の副作用は重くなる

2010年、ゴルフのインタビューで(C)日刊ゲンダイ

 それで、気になるのは「抗がん剤もやめていた」というバンドマンの長男の言葉。胃がんが進行すると、術後に抗がん剤投与を行います。体重が15%以上減ると、7割以上が抗がん剤を離脱するといわれるのです。体重減少で栄養状態が悪いと、副作用の口内炎や吐き気が出やすく、余計に食べられなくなり、痩せる悪循環に陥りやすいためと考えられます。

 それで、胃がんが進行して、転移病巣が大きくなっていたら……。突然の出血はあるかもしれません。

 もし読者の周りに胃がんの切除で痩せた方がいれば、体重を少しでも回復すること。その対策としては、食事の回数を分け、よく噛むのが一つ。消化を補う消化酵素薬を処方してもらったり、流動食タイプのサプリを活用したりすることもいいでしょう。

 それに加えて、筋肉を取り戻すトレーニングが不可欠です。実際、古谷さんも「トレーニングに通う日々」で復帰に向けて前向きだったといいます。ご冥福をお祈りいたします。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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