老親・家族 在宅での看取り方

大好きな炊きたての白いご飯を少しでもいいから食べたい

写真はイメージ

「ひとまず今日採血して抗生剤は内服で開始しましょう。月曜日もう一度採血結果を持って伺いますので、抗生剤を点滴にするのか検討しましょう」(私)

 時に食事も咀嚼がままならないこともあり、栄養補助食品などで補填しながら、輸血で命脈をつなぐ日々が続きました。それでもご本人の食べることへの意欲は衰えることはなく、在宅医療を開始した一番大きな理由も実は白いご飯を食べたいからというものでした。

「体重は?」(私)

「60キロくらいかな」(患者)

「量ってみましょう……47.5キロですね。だいぶ減っているみたいですよ。ご飯は食べていますか?」(私)

「小皿にちょっとくらいですけど」(患者)

 ご飯を炊いてくれる奥さまへ優しいまなざしを向けながら、自宅で大好きな炊きたてのご飯を食べる幸せを噛みしめるように、笑顔をこぼされていたのが印象的でした。

 あえて入院をせず、ご自宅での在宅医療を選ばれる患者さんの中には、さまざまな思いやこだわりをお持ちの方が少なくありません。たとえそれが些細なことであっても、ご本人にとっては大切だということを、私たちは理解しています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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