上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓手術で使われる人工臓器はどれくらい耐久性があるのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 人工血管は、ダクロン、ニット、ゴアテックスなどの合成繊維でつくられています。ある程度の柔軟性があって形を変えやすく、時間の経過により変性を来して太くなったり、いびつな形状にならないといった特徴を持つ素材でなければなりません。そうした素材が進歩したこともありますが、それ以上に「編み方」が進化しています。より生体に馴染みやすく、血液が漏れにくくなっているうえ、人工血管の内部で血液が固まったときでも、外側に近いところだけが固まって、中心部分までは固まらず、血流が維持されるような編み方の工夫が施されているのです。

 いまの人工血管は50~60センチで12万~13万円と高価になりましたが、その分、生体適合性が高く、トラブルを起こしにくいため、再手術のリスクが減ったといえるでしょう。

■生体弁はかつての2倍に

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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