心臓手術で使われる人工物には、ほかに「心臓弁」があります。大動脈弁狭窄症や僧帽弁狭窄症などの心臓弁膜症の患者さんに対し、傷んで機能しなくなった弁を、人工弁に交換する弁置換術が行われます。
人工弁には機械弁と生体弁の2種類があります。機械弁はチタンやカーボンなどの素材でつくられたもので、200年近い耐久性があるといわれています。ただ、どうしても血栓ができやすいため、血液をサラサラにする抗凝固薬を生涯にわたって服用しなければなりません。
一方の生体弁はウシやブタなどの心臓弁を加工してつくられたものです。生体由来なので血栓ができにくく、抗凝固薬の服用は短期間で済みます。ただ、機械弁に比べて劣化しやすいため、とくに若い患者さんでは15年以内の再手術が必要になるケースが少なくありません。
ただ、この生体弁も近年は耐久性が向上しています。かつては耐用年数は7~8年といわれていましたが、いまは平均で15年程度になりました。これも2倍以上延びています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」