上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓手術で使われる人工臓器はどれくらい耐久性があるのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心臓手術で使われる人工物には、ほかに「心臓弁」があります。大動脈弁狭窄症や僧帽弁狭窄症などの心臓弁膜症の患者さんに対し、傷んで機能しなくなった弁を、人工弁に交換する弁置換術が行われます。

 人工弁には機械弁と生体弁の2種類があります。機械弁はチタンやカーボンなどの素材でつくられたもので、200年近い耐久性があるといわれています。ただ、どうしても血栓ができやすいため、血液をサラサラにする抗凝固薬を生涯にわたって服用しなければなりません。

 一方の生体弁はウシやブタなどの心臓弁を加工してつくられたものです。生体由来なので血栓ができにくく、抗凝固薬の服用は短期間で済みます。ただ、機械弁に比べて劣化しやすいため、とくに若い患者さんでは15年以内の再手術が必要になるケースが少なくありません。

 ただ、この生体弁も近年は耐久性が向上しています。かつては耐用年数は7~8年といわれていましたが、いまは平均で15年程度になりました。これも2倍以上延びています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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