がんと向き合い生きていく

医学生のリポートを読んで思い出す医学部受験での出来事

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 受験科目は英語、数学、国語が必須で、他には生物、物理、さらに暗記の少ない社会科社会を選びました。社会科社会は哲学などがあって、興味津々でした。国語については、高校の担当教師に嫌われている気がしていて、むしろ夜に「NHKラジオ大学受験講座」の塩田丸男先生の講義を毎回聞きました。

 当時の入試制度だった国立1期校の志望大学に落ちた後、2期校での志望大学の過去問をやってみると、数学が難問でした。父は1浪を覚悟してくれました。私よりいつも優秀な成績だった同級生K君も1期校を落ちて、同じ2期校を受けることになりました。

 受験の宿は、鉄道員だった父が某市駅前の鉄道倶楽部を予約してくれました。試験の前日、その宿の客は私を含めて男性7人で、6人全員が医学部受験生、1人はS君という現役生の付き添いの父親でした。

 私とS君以外の4人は浪人生で、3浪2人、4浪と5浪が1人でした。夕食が終わると、みんな余裕があるのか、揃ってパチンコに出かけました。私はまだ暗記する英単語があって1人だけ行きませんでした。残ったS君の父親が、「あの浪人生の4人は開業医の息子らしい。良いもの着ているね」と話されたのが印象的で、たしかに学生服を着ているのはS君と私だけでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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