がんと向き合い生きていく

医学生のリポートを読んで思い出す医学部受験での出来事

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 後日、合格の報告が来た時は、父がいちばん喜んでくれました。新品の予備校の教科書は、もったいないと思いましたが、それでも半年後くらいに捨てました。

 大学に入学してみると、合格した70人の中にはK君、高校1年先輩のT君がいましたが、同じ宿舎に泊まった受験生はS君も含めて誰もいませんでした。あの人たちはどうしただろうかと今でも思うことがあります。

 高校の同級生が、「佐々木が合格したのだから、自分も入れる」と思ったのか、翌年に2人入学してきました。

 優秀だったK君は大学卒業後に内科医となりましたが、3年後に白血病で亡くなりました。外科に進んだT君は長年、地域医療に貢献されましたが、2年前に全身がんで亡くなりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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