高齢者の正しいクスリとの付き合い方

「食べる+のみ込む」5つのステージにクスリが影響を及ぼす

“食べる”という行動はじつは高度な作業

 準備期は、食べ物を口の中に入れて「もぐもぐ(咀嚼)」し、舌の上に食塊という食べ物のお団子を作る時期のことです。ここはみなさんも実感できるところなので、ぜひ食事のときに意識してみてください。咀嚼していると徐々に舌の上に食べ物が集まってくるのがわかると思います。

 口腔期は、舌の上に作った食塊を喉の方に送り込む時期です。ここで重要となるのが舌の力です。口腔期では舌を口の上側、つまり口蓋に押しつけることで食塊を喉に向けて移動させます。そのため、高齢で舌の筋力が衰えているような場合には、ここの部分がうまくできずにのみ込めなくなってしまいます。

 咽頭期は、舌の力で咽頭まで送り込まれてきた食塊を食道に運ぶ時期です。いわゆる「ごっくん」することをいうのですが、1秒にも満たない極めて短い時間で行われるので、自分の意識で調節することはできません。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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