多剤処方と長期処方が増えれば、それだけ薬の副作用による健康被害が生じるリスクがアップします。また無駄な薬が処方されるケースがあれば、無駄な医療費もかさみます。そうした懸念から、いまの保険診療では、医療機関が一度に7種類以上の内服薬を処方した場合、“ペナルティー”として処方料が減算されるようになりました。しかし、それでもお構いなしにたくさんの薬を処方する医師はいますし、いくつも薬を処方してもらいたがる患者さんは少なくありません。
先ほどもお話ししましたが、服用している薬の種類が多くなれば、副作用が現れるリスクは上がります。6種類以上の薬を飲んでいる人は副作用の発現率が10%を超え、有害事象が起こりやすくなるという報告もあります。薬の飲み合わせや作用の重複による効きすぎで健康を損なう可能性も高くなります。
そのうえ、それが長期処方となれば、さらにリスクはアップすると考えられます。現在、長期処方が許されている薬は、長期の使用でも安全性が認められている薬に限られます。しかし、その中でも比較的新しい薬や、患者さんがそれまであまり使った経験がないような薬が、いきなり2~3カ月分処方された場合、その患者さん固有の副作用が生じる危険があるのです。そうした副作用が出たとき、患者さんが自分で薬を中止する判断ができればよいのですが、多剤処方でたくさんの薬を使っていると、どれが原因になっているのかはそうそうわかりません。
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