部長のM先生は、とても熱心な医師でした。普段は1時間半くらいで終わるのですが、M先生が当番で担当されると最低でも2時間以上を要しました。M先生は目を輝かせ、しっかり説明しながら剖検してくださいました。臨床病理医として超一流であったと思います。
ご家族は、ご遺体が戻ってくるのを待ち、そして剖検の結果を聞き、死亡診断書をもらって、それから一緒に帰られました。
■病理の先生から多くを教わった
M先生は、普段は厳しく、とても怖い先生でもありました。ある時、外来でリンパ節生検が行われ、採取したリンパ節をガーゼに包んで病理科に持参すると、一目見たM先生は「このリンパ節生検は誰がやったのか? 生検の仕方が悪い」と怒りました。
月1回、大会議室で臨床医を集めての病理科カンファレンスがありました。先に担当医から臨床経過が報告され、その後、病理科から剖検結果の報告があります。そのカンファレンスでM先生が怒り出すと、睨まれた若い医師たちはかわいそうでした。
がんと向き合い生きていく