がんと向き合い生きていく

がん遺族会から届いた冊子を読んでいたら心が温かくなった

写真はイメージ

 話を戻します。

 あの講演以来、青空の会からはずっと冊子を送っていただいております。多くの遺族の方からの「お便り」の欄では、がんで夫を、妻を、お子さんを亡くした方々の思いがつづられています。

 これまでの幸せから、急にひとりで生きることになる──。とても厳しいことだと思います。共にある、共に生きるということが、どんなに大切であったかを知らされます。

 深く沈んだ心が蘇るまでは、人によって大きく違うと思うのですが、この冊子から、たくさんの方の心が救われているのがよく分かります。人は、みんな死ぬ、必ず別れがある。「別れて残されるよりも先に死んだ方が楽」と話される方もおられますが、一方で、死ぬことも楽かどうかは分かりません。いずれにしても、残された者はそれぞれ生きていかなければなりません。

 青空の会のつどいの冊子には、「夫の死から24年が過ぎました。(中略)お墓の前では守って下さい、助けて下さいとお願いごとばかり……いつになったら安心してくださいといえるでしょうか?」とありました。とてもよく理解できる気がします。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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