心臓手術は執刀する外科医によって「完成度」が大きく違ってきます。たとえば、同じ食材を使ったとしても、おいしい料理を提供できる料理人と、それほどでもない料理しかできない料理人がいるのに近い感じです。
神様がつくった“うつわ(臓器)”を預かって、大切に修復し、再び神様が認めてくれるような形で患者さんに戻す──。
すべての物が矛盾を来さない自然な形にしなければなりません。切開する場所や方法、一針一針の縫い方、血管をつなげる箇所など、それぞれ意識しながら丁寧に処置を行い、それらすべての積み重ねが完成度の違いになって表れます。
技術はもちろんですが、そこには外科医の心構えの差が表れるといってもいいでしょう。
■こだわりは変化を生まない
そうしたより高い完成度を求め、つい数カ月前に冠動脈バイパス手術を実施する際の「縫い方」を、およそ20年ぶりに変えました。手術をサポートしてくれる助手になるべく依存しないようにするためです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」