医療だけでは幸せになれない

感染症の流行に終わりなし…不要不急の外出禁止がもたらした矛盾

マスク着用には感染症予防以外のニーズもある(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 2019年12月に原因不明の重症肺炎が中国で報告されてから、丸3年以上が経過した。この間、いろいろなことがあった。「あった」というのは正確な表現ではない。いまだ現在進行中である。日々、さまざまなことが起こり続けている。日々、新たなニュースが報じられ、何も終わっていないというのが現実だ。感染者数や重症者の情報は毎日流され続けている。終わってから振り返るというには、まだまだ時間がかかりそうだ。終わらないという可能性もある。むしろ、その確率が高いといった方がいいかもしれない。またコロナが収束したとしても、新型インフルエンザなど、別の感染症の流行は今後も必ず起こるだろう。

 感染症の流行には終わりがない。一時的な収束があるだけだ。終わりを待つのがどうやら無理らしいということに、そろそろ気づいた方がいい。あるいは、次のように言うこともできる。感染症に限らず、人間の健康に対する病気の脅威はなくならない。さらに言えば、病気の脅威がすべて克服できたとしても、老いによって健康は徐々に失われるし、その先の死を避けることはできない。不老不死とはいまだ想像上のものに過ぎない。天国、極楽と同じレベルである。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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