医療だけでは幸せになれない

感染症の流行に終わりなし…不要不急の外出禁止がもたらした矛盾

マスク着用には感染症予防以外のニーズもある(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

■顕在化されたマスク問題

 マスクに関して言えば、流行が収まっても多くの人が着け続けるつもりというニュースも耳にした。

 ただ、このマスクの着用に関しては、感染症予防ということだけではない。健康維持のためというよりは、顔を隠したいというようなまったく別のニーズがある。コロナ流行以前からマスクを着けている人はそれほど珍しくはなく、それが問題にされることはなかったが、コロナの流行が健康と無関係なマスクの着用の問題も同時に顕在化させた。さらにわかりやすく言えば、マスクをしていない人を見つけては着用を強制する“マスク警察”の出現、逆にマスクの着用を断固として拒否する反マスクグループの出現。これは健康の問題ではない。

 コロナの流行も、健康だけの問題ではないと言えば当然のことでもある。コロナの流行は、人間の健康以外にも、多くの脅威をもたらした。むしろその健康以外への影響と健康に対する影響が相反するところに最大の問題があった。「命か経済か」というフレーズがしばしば語られたのは、そのひとつだ。しかしこれも、人は健康を失っても死ぬし、貧困で食べられなくても死ぬという、古くからある問題に過ぎない。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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