医療だけでは幸せになれない

「コロナは風邪」論争の不毛 昔から解決できない問題に出口なし

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しかし、この反論に対してさらに反論を考えてみる。「あなたは自分の知らない人に対しては、無視してもいいというのか。自分の知らない人が重症化してもそれはどうでもいいというのか」というのはどうか。これも十分理屈は通っているが、この反論に対しても反論することはそれほど難しいことではない。

「どうでもいいというわけではないが、そこまで広い範囲を考慮するのは私の役割ではなく、地域、市町村、あるいは都道府県、国が考えることではないですか」というのはどうか。しかしこれにだって反論はたやすい。

「それでは、国が『コロナは風邪でない』と言えばそれに従うんですね」というわけだ。それでも「いやいや、国がそう言ったところで、一人一人がどう考えるかは自由でしょう」ということになる。

 ここで強調したいのは、この議論のどちらに分があるかということではない。この議論にはキリがないということである。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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