医療だけでは幸せになれない

迷うようなことはだいたいどっちでもいい…考え続けることが重要

着けていてもいいし、外していてもいい(C)日刊ゲンダイ

 どうしたらよいか迷うようなことは、だいたいどちらでもいいというのが、私自身のこれまでの経験から言えることだ。さらに言えば、こっちでないと困ると判断したことも、振り返ってみればどっちでもいいということがほとんどだった。大学入試の時、なんとしても合格する、合格するために一生懸命勉強する、という判断をしたが、今から思えば、もっと適当に勉強して、行ける大学へ行って、適当にすればよかったという気持ちもある。そもそも大学に行かなくてもよかったかもしれないと思わないでもない。

 ただそんなことを書くと、医者になったからそういうことが言えるのだと言われそうだ。確かにそういう面はある。しかしその医者にしたって、私が医学部に入学した40年以上前は、まったくひどいものだった。大学病院の研修医には給料すら払われず、無給の医局員というのが大勢いた。さらに無給どころか、大学院の授業料を払って、病院の仕事をしている人も珍しくなかった。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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