そこで弘前大のグループはPSAに連なる糖鎖に注目。前立腺にがんができると、その構造が変化することを突き止め、その構造の違いを調べるための血液検査の仕組みを開発したのです。
臨床試験で前立腺がんが疑われる439人を調べたところ、がんかどうかを区別する精度がPSA検査より2倍近く高いという結果が得られました。研究グループは、PSA検査で数値が高い人に2次的にこの検査をすることで、4割前後の針生検を回避できるとしています。
前立腺肥大でもPSAが10を超えることは珍しくないため、血液検査で前立腺がんを絞り込めるのは歓迎です。前立腺がんは、日本人男性の9人に1人が罹患(りかん)します。この検査がもたらす影響は大きいでしょう。
ただし、注意点もあります。前立腺がんは、他のがんに比べると穏やかなことがあり、たとえ前立腺がんができても死因にならないことがあるのです。その割合は、70代で2割、80代で3割、90代で5割と少なくありません。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵