医療未来学者が語る 5大国民病のこれから

精神疾患は技術の発達で原因遺伝子や病態の解明が劇的に進む

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 そうしたことから患者側は症状の重さを自覚できなかったり、医師に症状を偽ったりし、医師側も満足いく治療ができない部分もあるという。

■AIの進歩で大量のスクリーニングが可能に

「しかし、AI(人工知能)が発達すれば一度に大量のスクリーニングができるため、省力が可能になる。精神疾患は今以上に診断される人が増える一方で、治る人も増えるのではないか、と予想しています」

 たとえばAIを用いた対話型の自動応答ソフト「ChatGPT」はその有力候補になるかもしれない、と奥氏は言う。すでに技術的には実用レベルまで達していて、もうすぐ患者自身がChatGPTの医療版に悩みを打ち明け、診察を受けるきっかけになりそうだ。

「声にはその時の感情や健康状態が現れることが知られています。その声をバイオマーカーにして、精神疾患の診断に役立てようとする試みが行われています。声帯は副交感神経である反回神経の支配を受けていて、ストレスを感じると交感神経が優位になり、声帯が緊張して周波数が高くなります。こうした声の状態を分析することで、心の状態を分析しようというわけです。世界で開発競争になっていて中国では音声人工知能を手がける企業と北京大学の研究チームが音声を使ったうつ病スクリーニングの臨床研究を進めています」

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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