ニューヨークからお届けします。

州民が州民を自由に訴えて「賞金」まで…テキサスで中絶訴訟が泥沼化

ワシントンで開かれた中絶権利集会で講演するカマラ・ハリス米副大統領(C)ロイター

 この理不尽にすら思える法律を適応した訴訟が、早くも起こっています。

 この訴訟は元夫が、「元妻の中絶行為を助けた友人女性2人には、胎児の死に対して責任がある」と訴え、それぞれに対し1人100万ドル(1億3千万円)もの支払いを請求しています。もし元夫が勝てば、「胎児にも人間と全く同じ人権がある」という中絶反対派の悲願が認められることにもなり、それにより女性の権利がさらに狭まることを警戒する声も高まっています。 

 ところがこれに対し、訴えられた方の友人女性たちが逆に元夫を訴えたことで、事態はさらにややこしくなりました。

 元夫は、2人の友人と中絶を受けた本人とが交わしたショートメールを、最も重要な証拠として提出していました。しかし今回友人女性たちは「これらのショートメールは本人の許可なく無断で閲覧されたもので、プライバシーの侵害だ」と訴えたのです。もしこれが認められれば、元夫はこれを証拠として使えなくなることになります。

 中絶をめぐって泥沼となった訴訟合戦がどこに着地するのか、全米が固唾を飲んで見守っています。

2 / 2 ページ

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事