がんと向き合い生きていく

抗がん剤では80%の患者に脱毛が起こる…見た目の変化が苦痛に

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 その準備として、散髪屋さんが来て、病室でTさんの頭を刈ることになりました。髪の毛がなくなったTさんを見て、私は驚きました。

「なんと、すごい美人さんだ」

 手術は無事に成功しました。

 5年ほど会っていなかった医療従事者のS君に再会した時、その容姿には驚きました。頭の髪だけではなく、眉毛もほとんどなくなっていたのです。「どうしたの? がんの治療でもしたの?」と聞くと、精神的ストレスだといいます。

 S君は「がんではないんだけど、ここのところいろんなことがあって……」と話し始めました。親を亡くしたこと、職場環境が大きく変わったこと……話の途中から、S君の目から涙があふれます。それでも、話し終わった頃は「でも最近、少し生えてきたんですよ」と言って、笑顔が見られました。聞けば、皮膚科専門医のところに通院しているといいます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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