がんと向き合い生きていく

膵臓がんで亡くなった先輩医師にはさまざまなことを教わった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私の先輩にあたるB先生は、出身大学で内科講師を務めた後、上京してがん専門病院に勤務し、ご自宅のある横浜から通勤されていました。

 私が国立がんセンター(当時)で3年間の内科研修を受けた際、B先生を訪ねてみました。それが、B先生にお会いした最初です。先生は笑顔で、とても歓迎してくれました。その後、長い間、私の「相談支援係」となってくださいました。

 がんセンター内に24時間住み込みとなって、ストレスがたくさんたまってしまう私を、B先生は2カ月に1回くらいのペースで新橋駅近くの居酒屋に招いてくださいました。予約した店の奥にある畳3畳の部屋が“いつもの場所”です。秋田のお酒と、きりたんぽ、シュウマイがおいしいお店でした。

 B先生はご自身でもおっしゃっていたように江戸っ子の“べらんめい調”で、いつもニコニコ、夜11時過ぎまで熱い徳利を何本もいただきました。お酒が進み、その勢いもあって、私はがんセンターでのいろいろな不満を口にしたと思います。そんな私の話をB先生はよく聞いてくださいました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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