医療だけでは幸せになれない

統計医学的検討…「有意差なし」は必ずしも「効果なし」の意味ではない

「有意差なし」が効果がないということではない(C)日刊ゲンダイ

 そこでまぐれの可能性、危険率がどれくらいであればまぐれでないと言えるのか、ということであるが、一般に医学論文では5%未満が採用される。この結果で言えば、5%以上なので統計学的に有意な差はないということになる。

 ここで重要なのは、まぐれで効果ありとした可能性、危険率が5%以上なのでマスク推奨の効果があるとは言えないが、効果がないとも言えないということである。統計学的な有意差がないという結果を見ると効果がないと判断しがちだが、そのような判断は間違っている。先の信頼区間で見たように、100から54に減らすとすれば効果があるといった方がいいし、123に増やすようなら効果がないどころか有害かもしれないのである。「有意差がない」というのは、減らすとも増やすとも言えないということに過ぎない。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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