がんと向き合い生きていく

UCLAの教授だった同級生の訃報…元気で会えたら聞いてみたかった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 講演後の夜は、歓迎パーティーを病院近くの居酒屋で開きました。研修医たちは米国医師を囲んで遅くまで歓談していました。米国医師は、講演後に京都などを旅行して、帰国する方もいらっしゃったようです。

 日本の研修医が、日本の病院の各科を回るだけではなく、たとえ短期間でもアメリカに渡り、UCLAの診療などの見学もできたのです。S君と私は、研修医が若い時代にそのような経験をすることで、より視野の広い医師に育つことを確信していました。

 当時、UCLAの病院を見学して卒業した研修医たちは、現在は某がんセンターなどで中堅医師として、あるいは指導医師として活躍しています。

 数年前、S君から届いたメールによると、心臓の大きな手術を受けた後、腎不全となったようでした。しかし、彼は負けませんでした。毎夜、就寝中に腹膜灌流透析を行い、昼は診療と研究をしていたのです。そして、その後も何回も日本に来て、腹膜灌流透析を行いながらも各地を講演して回りました。その話を聞いて、私にはとてもできることではないと思いました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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