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肩鎖関節脱臼を放置すべきか、今すぐ治療か…医師も迷っている

写真はイメージ

 肩鎖関節脱臼を患った患者を診察した際に、特に治療はせず、経過観察とする医師は珍しくありません。その理由をお話ししたいと思います。

 肩鎖脱臼を起こした肩は、受傷時こそ痛みがあり機能低下します。しかし、数週間で肩関節は日常生活に困らないレベルまで症状が消えます。

 特に若いスポーツ選手は、肩鎖関節脱臼で鎖骨がすごく突出していても、難なくスポーツに復帰できます。そのため、医師も経験上、「現段階で治療は必要なし」とし、経過観察を選択することが多かったのです。

 しかし、医学の進歩によりエビデンスが集約されました。先週もお話ししましたが長年の経過でみると、無症状にならないことが多いのです。

 著しい機能障害にならない、ただし無症状にもならない。それをどう捉えるか。医師の哲学や患者さんへの向き合いが千差万別であるがゆえに、肩鎖関節脱臼への対応が医師間で異なるのが現状です。

 肩鎖関節脱臼への対応をどうするか、迷っている医師も少なくありません。私の提案は、もし肩鎖関節脱臼を患ったら、主治医と将来の肩関節がどうあるべきかじっくりお話をすることです。保存療法の予後を具体的に聞くことをお勧めします。

森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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