人工血管の生体に対する適合性=フィッティングに関する研究データは、あくまでも正常な組織に縫い付けた場合のデータです。また、人工血管を異常がある血管(組織)と縫い付けたときに、それが正常な部分に縫い付けた場合と変わらないという科学的な証明もされていません。一方で、異常がある組織に人工血管を縫い付けた場合、後になってその部分に新たな動脈瘤ができたり、後遺症が現れたり、縫い付けた部分がトラブルのもとになって突然死を招いたといった症例が報告されています。
ですから、大動脈の手術を行う際は、異常な部分は残さないように切除して、正常な組織に人工血管を縫い付けます。ケース・バイ・ケースですが、完全にダメになってしまった部分にプラスして5センチくらい長めに切除したうえで、人工血管に取り換えます。これは、二期的手術と呼ばれる計画的な再手術を予定している場合でも、最初の手術が2度目の手術に影響を及ぼさないような形で処置できるため、同様に実施します。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」