第一人者が教える 認知症のすべて

低血糖症を起こしたことがある人は認知症発症リスクが2倍になる

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 つまり、糖尿病で認知症を合併すると低血糖を起こしやすく、低血糖を起こすと認知機能低下が進みやすいという、負のスパイラルが出来上がってしまうのです。ただし、血糖管理を厳格に行うと認知機能を改善するかどうかについては、エビデンスは得られていません。

 いずれにしろ、特に高齢者では低血糖に気をつけなくてはなりません。日本老年医学会・日本糖尿病学会合同委員会から発表された「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」では、高齢者が重症低血糖を起こしやすい糖尿病治療薬を用いる際は、HbA1c値の目標値は通常7.0%未満のところを条件に応じて7.5%未満から8.5%未満にするなど、緩やかに設定されています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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