第一人者が教える 認知症のすべて

低血糖症を起こしたことがある人は認知症発症リスクが2倍になる

起きた時に頭痛がする場合も注意が必要
糖分は脳のエネルギー源。だから低血糖は脳にダメージを与える

 低血糖は、糖尿病の薬物治療を受けている人に起こる緊急事態。健康な人でも空腹時など血糖が下がり気味になりますが、その場合は低血糖といいません。

 血糖値がだいたい70㎎/デシリットルを下回ると、さまざまな低血糖の症状が現れ始めます。

 まずは「交感神経症状」で、「汗をかく」「脈が速くなる」「手や指が震える」など。次に「中枢神経症状」が現れ、頭痛や集中力の低下、生あくびなど。

 さらに血糖値が50㎎/デシリットルより低くなると、ワケのわからないことを叫ぶなど人柄が違ったような異常な行動が見られたり、けいれん、昏睡(意識を失う)も起こり得ます。非常に危険な状態で、命に危険が及ぶケースもあるので、場合によっては救急車を呼ぶ必要があります。

 低血糖で認知症のリスクが高まるのは、脳は糖分をエネルギー源として利用しているため、低血糖発作を起こすと脳がダメージを受けるからです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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