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子宮頚がんワクチン…男性の接種も費用負担が減るかもしれない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 今年9月、東京都の小池百合子知事が、子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)接種を男性が受ける際は自費となることについて、「男性のがん予防や集団免疫の効果が期待でき、区市町村への支援を検討する」と述べ、男性への接種費用の補助も考えておられるようでした。HPVワクチンは、小学6年から高校1年の女性は定期接種の対象で無料で接種できます。一方、男性が接種する場合は、ほとんどの自治体では自費でおよそ5万円かかるようです。

 子宮頚がんは子宮の入り口にできるがんです。90%以上がHPV感染に起因し、性交で感染することが分かっています。HPVに感染してからがんになるまでは数年から数十年と考えられ、またHPV感染は男性でも尖圭コンジローマや陰茎がんなどを起こします。日本では、子宮頚がんは年間約1万人が罹患し、約3000人が亡くなっています。

 ある婦人科の医師は、「ワクチン接種により感染を減らし、88%ほどがんの発症を減らせる。がんの予防効果は10年以上経過しないと分からないが、前がん状態のほとんどがHPVによるものであることが分かっており、ワクチン接種で感染を防げるのであれば、それに越したことはない」と話されます。また、「前がん状態あるいはがん初期で見つかれば、子宮頚部の円錐手術で済む。流産や不妊の原因になる可能性はあるものの、命に関わることはない」とのことでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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