上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓にとっては「安静」よりも「適度な運動」が大切になる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 入院生活において座っている時間が長い人は、短い人に比べて退院時の身体機能指標が有意に低い──。今年6月、神戸大と早稲田大の研究グループが心臓病で入院している患者353人を対象に行った研究結果を発表しました。

 入院期に心臓リハビリを行っていても、入院中の座っている時間の長短によって退院時の身体機能に差が認められたといいます。入院中や退院後の生活では、座っている時間を減らして体を動かすことが身体機能の改善にとって重要だということです。

 たしかに、心臓にトラブルを抱えている人にとって、適度に体を動かすことは非常に重要です。心臓の手術を受けた患者さんは、再発予防のためにも負荷をかけすぎない適度な運動が欠かせません。そのため、心臓の手術を受けた後、患者さんは医師や看護師の指導のもと、必ずリハビリを行います。

 かつては、術後は1週間近く集中治療室で安静にするのが当たり前と考えられていました。しかし近年は、患者さんがベッドから起き上がって歩行などを行う「離床」をできるだけ早く始めるようになっています。回復状態によって違ってきますが、一般的には手術の翌日から離床を始め、2~3日で病院内を歩き回ります。術後に安静にしている期間が長くなると、筋力が低下したり、呼吸機能が落ちたり、体力が衰えて日常生活に戻るまでに時間がかかってしまうことがわかってきたからです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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