Dr.中川 がんサバイバーの知恵

朝潮に続きKANさんも…小腸がんをしっかり見つける検査の手順

 小腸にがんが少ないのは、いくつか理由があります。ひとつは、小腸が人体最大の免疫器官で、免疫細胞のおよそ半数が集まり、がん細胞などを未然に攻撃していること。もうひとつは24時間程度で細胞が生まれ変わる新陳代謝の速さ。大腸はそれにほぼ1カ月を要しますから、その差は歴然でしょう。

 そんな監視の目をすり抜けてがんができると小腸のがんも、ほかのがんと同じように早期は無症状。相次いで小腸のがんで命を落とした2人が進行して見つかったと思われるのは小腸ならではの要因もあります。実は胃の内視鏡でも大腸の内視鏡でも、小腸には届かないため検査がしにくいのです。進行すると、腹痛や膨満感、貧血などの症状が現れます。これらは胃や大腸などの異常でも生じる症状ですが、胃と大腸の内視鏡に異常がないのに症状が続く方は小腸を調べてもらうとよいかもしれません。

 その場合、カプセル内視鏡がお勧めです。直径11ミリ、長さ26ミリのカプセルにライトやレンズ、カメラ、画像転送装置などが詰め込まれたカプセルを口からのみ込むと、便から排泄されるまで消化管の様子が撮影される仕組みです。撮影は1秒に2~6コマ。小腸もチェックされます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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