感染症別 正しいクスリの使い方

【薬剤耐性】ペットや家畜への抗菌薬の乱用は人間にとって脅威になる危険

抗菌薬は畜産業やペットの健康管理にも使用されているが…(C)iStock

 動物が抗菌薬に対する耐性を獲得するプロセスとして、畜産業における使用やペットへの抗菌薬の投与などがあげられます。抗菌薬は感染症の予防や治療に有用ですが、過度の使用は薬剤耐性を助長します。ペットに対しても適切に使われればよいのですが、誤った使用や未使用分の廃棄は問題となります。

 動物が薬剤耐性を持つと、感染症の治療が難しくなるだけでなく、薬剤耐性を持つ微生物は動物からヒトに感染する可能性があるため、拡散すると公衆衛生にとって大きな脅威となります。本連載でも抗菌薬の適正使用について何度かお話ししてきましたが、これはヒトだけでなく動物にも当てはまることを考える必要があるのです。

 ヒトにおける薬剤耐性対策は厚生労働省が力を入れていますが、動物における対策は農林水産省が推進しています。畜産業やペットケアにおける抗菌薬の使用を適切に管理し、乱用を防ぐことが大切です。ペットの治療には、獣医の指導を受け、決められた用法通り薬をきっちりと使いましょう。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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