第一人者が教える 認知症のすべて

若年性アルツハイマー病を発症しても、対策を講じることで定年退職まで仕事を継続できる

周囲の協力でアルツハイマー病を患いながら仕事を両立することも(C)日刊ゲンダイ
本人、家族、勤務先側、産業医、主治医で相談

 令和3年度厚生労働省老人保健健康増進等事業において、私が座長を務めた「若年性認知症疾者の就労支援のための調査研究事業」検討委員会で、「若年性認知症における治療と仕事の両立に関する手引き」を作成しました。ここで、アルツハイマー病を患いながら仕事を両立した事例として50代男性の話を紹介しています。

 大手家電メーカーに、各種家電の組立工として勤務していた男性で、同僚の名前や基本的な現場のルールを忘れたり、提出する書類を間違えたりといったトラブルが生じ始めたのが数年前。次第に物忘れの頻度や程度が増していったことから、上司や同僚の勧めもあって、産業医に相談。病院で精密検査を受けたものの、脳の萎縮が認められず、その時点ではアルツハイマー病との診断はされませんでした。

 しかし物忘れによるトラブルは続き、最初の病院を入れると3軒目に受診した病院で、アルツハイマー病、認知症レベルはレベル1(軽度認知症)と診断。抗認知症薬の治療が始まりました。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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